長距離選手の実業団移籍問題について真剣に考えてみた。
昨年、日本実業団陸上競技連合は公正取引委員会から独禁法違反の恐れがないか調査を受け、選手の「移籍の自由」を最大限に尊重するためのルール改定をしました。同連合の規定の「円満移籍者でない者の登録申請は無期限で受理しない」との条項を撤廃し、より移籍がしやすい状況となりました。
この移籍の自由化に関して思ったことを書きました。
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終身雇用を前提としていた
まず、実業団の選手は競技を終えたあと企業に残り、通常業務を行う場合が多いです。それだけに企業で競技を続ける選手=会社で退職までしっかりと面倒を見るという思いが企業にあると思います。さらに企業で走っている間は仕事の免除や給与面など様々な恩恵を受けているわけですから、最後まで会社に貢献してもらいたいという強い思いがあったのではないでしょうか。
実業団が出来た当時の日本は終身雇用が当たり前で、入社した企業で最後まで全うするというスタンスが当たり前の時代だったように思います。
今では契約というスタイルで実業団に所属している選手も珍しくなく、雇用のスタイルが昔と今では大きく変わったように思います。
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移籍して活躍してほしくない
他チームに移籍され、活躍されたらライバルとなるわけですから面白くありません。さらに育てるまでに時間とお金を投資していたのであれば、企業的な言いかたをすれば投資分を回収したい気持ちになるのは当然のことです。それだけに移籍をさせたくないという気持ちがあったのではないでしょうか。
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お金で人が動く可能性
もし、移籍が自由になり、規制もなく移籍できるようになると一番心配なのはお金で人を取るということです。これだけのお金を出すから移籍しないかと持ちかけられて選手をどんどん引き抜くことが可能となるわけです。そうなるとお金のある実業団が選手を引き抜き、企業体力のあるところだけが強くなるシステムが出来上がります。
現実、移籍先を探していた選手を多く引き受けている実業団があります。たまたま移籍先を探していた選手を多く受け入れただけなのかそれとも条件面が良かったのかわかりませんが、チームのレベルは格段に上がりました。
そうなってくると撤退する実業団も増えるのではないかなと思います。逆に企業体力のあるチームはすぐに参戦することも可能になるのではないかと思います。
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学生の考えが変わる
実業団から勧誘を受けた選手はいろいろな話を聞き、見学に行き、真剣に悩んで企業を選択していると思います。しかし、移籍が自由化すれば少し話が違ってきます。自分が行きたかった企業から話が来なくても話があった企業にとりあえず入社して、そこで強くなって自分の行きたかった企業へ移籍するという選択肢も出てくるかもしれません。
すべての実業団が移籍を受け入れる体制でなければいけませんが、かなり強くなれば様々な企業への移籍は可能になってくるのではないでしょうか。
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今後の実業団
現在、実業団は転機にあると思います。以前も書きましたが、今までと同じような形で実業団を継続するチーム。「移籍される」「移籍してくる」を前提とした契約選手のみ採用して実業団を運営するチーム。社業と陸上をしっかりと両立していくチームに分かれるのではないかなと思います。
移籍は悪いことではありませんが、移籍が頻繁に行われるようになればなるほど今までと違った実業団のルールができてしまうのではないかなと思います。